本日はファクター投資について、学んだことをお話ししたいと思います。
以前、ポートフォリオの分散について検討したときに、
簡単にファクター投資について触れました。
今回は、もう少し詳しく解説いたします。
私自身、ファクター投資を少し学んだだけですが、
マーケットに対する新しい視点を得られ、
より冷静にマーケットの動きを見ることができるようになったと感じています。
まだ「ファクター投資ってなに?」という方には、
本記事をきっかけにご一緒に学んでいければと思います。
と言っても、奥が深そう(&私の理解は浅そう)ですので、
「ここが肝要だろうな」
というポイントに絞ってまいります。
技術的な話もナシです。ご容赦を。。(笑)
なお、話のネタは九分九厘、こちらの書籍です。
ご興味のある方は、ご一読をお勧めいたします。
そもそもファクター投資ってなに?
ファクター投資を簡単にご説明しますと、
- 統計的な手法で、
- 収益(プレミアム)の源泉=ファクターを特定して、
- そのファクターをもとに意思決定をしよう
というものです。
要は、
「この銘柄群は、こういう特徴=ファクターを持っていたから、市場を上回るパフォーマンスを発揮できたんだ!」
…といったものを見つけようという試みですね。
これ、なかなか画期的なことです。
なぜって、これまで「目利き力」といった言葉で秘密のベールに包まれていた「超過リターンの源泉」が、再現性のある方法で明らかになるのですから、、
言わば、インスタント・ウォーレン・バフェットを量産できるわけですね!ほんとぉ?(純粋)
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…話を戻しまして、
この「ファクターがプレミアムを持つ」というのは、
例えば、
「小型株は大型株を長期的にはアウトパフォームする可能性が高い」
「バリュー株はグロース株を長期的にはアウトパフォームする可能性が高い」
…といったようなものです。
この「小型」「バリュー」といったものがファクターですね。
より具体的には、小型は時価総額、バリューはBMR(簿価時価比率)等といった、
特定の性質を表す指標によって定義されます。
実物を見て頂いた方が、イメージが湧くでしょう。
次の図は、ETF.comからの抜粋です。
出典:ETF.com
https://www.etf.com/SPYD#overview
この図は、SPYDがどのファクターに「エクスポージャーを持っているか」を表しています。
SPYDの場合は、「小型」「バリュー」「配当」に偏っていますね。
ですので、SPYDはこれらのファクターが好調な時期に、
高いパフォーマンスを発揮する可能性があるわけです。
ファクター投資の目的
ファクター投資の主な目的の1つは、ファクターによる分散です。
分散は投資における唯一のフリーランチと呼ばれています。
つまり、
- ポートフォリオのリスクはそのままに、リターンを上げる
- ポートフォリオのリターンはそのままに、リスクを下げる
- その両方を実現する
こうしたことが期待できるわけです。
この辺りは、伝統的なアセットクラス*による分散と同じですね。
* 株式60:債券40に分散する、、みたいなやつです。
…なお、敢えて分散はせずに特定のファクターに偏った運用をすることで、
大幅なリターンを狙うアクティブ運用も可能です。
覚えておくべきこと
長期的に負けることもある
さて、先ほど私は、
「小型株は大型株を長期的にはアウトパフォームする可能性が高い」
このように申しました。
この「長期的には」「可能性が高い」とはどういうことでしょうか。
次の図をご覧ください。
出典:ファクター投資入門
これは、1927年から2015年の間に、
サイズファクター(小型株)が、市場平均を上回る確率を集計したものです。
ご覧の通り、20年保有しても14%の確率で報われない可能性があるのです。
そもそも、常に特定のファクターが好調であるわけではありません。
次の図からもわかるとおり、様々なファクターが景気の局面に応じて、
代わる代わるにパフォーマンスを上げているに過ぎません。
出典:Alliance Bernstein
https://www.alliancebernstein.co.jp/knowledge/archives/326
常に当てはまるわけではないと思いますが、一般的には次のようなファクターごとの「好調な局面」「不調な局面」があるようです。
出典:Alliance Bernstein
https://www.alliancebernstein.co.jp/knowledge/archives/326
リターンの源泉はアンダーパフォームの可能性だ
そもそもリターンの源泉はリスクです。
先ほども申した通り、投資にフリーランチは(分散以外は)ありませんし、
永遠に上り続ける塔はありません。
リターンの源泉の多くは、悪い時期から生まれるのであり、
アンダーパフォームする可能性を受け入れるからこそ、
超過リターンのチャンスが得られるのですね。
一言で言えば、「下がるから上がる」のです。
実際、効率的な市場において、ファクターがプレミアムを持っていることの説明として、「リスク」に焦点が当てられます。
※ リスクの観点のほか、投資家の行動の非合理性から説明するアプローチもあります。
例えば「小型」の場合、大企業に比べて、、
- ビジネスが未成熟
- 財務体質が脆弱
- 利益変動が激しい
- 資金調達力が限定的
といった「リスク」を抱えることがよくあります。
こうしたリスクの対価として、ファクターは追加的なリターンを得ているわけですね。
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ウォーレン・バフェットも、
「投資家に必要なのは衝動を抑える気性であって、知性ではない」
…と言っています。重要なのは忍耐なのです。
私は割と単純な性格ですので、
「バリューは儲かるのか、、じゃあ、これに投資しとけばいいじゃん!」
…などと考えがちですが、そう甘くはないということですね。
個人的な経験からも安易なファクターの過信はお勧めしない
特に、「今、好調なものに飛びつく」事は、個人的な経験からもお勧めしません。
私自身は、そうした失敗を多く経験してきました。
「今、好調なもの」は、悪い時期を潜り抜けたものです。
そして、現在進行形で「超過リターンが減少しつつあるもの」です。
そうした好調なものからリターンを切り取るには、
そういう才覚が必要だと感じます。
うまい方は、本当に素早く利食いも損切りもされますね。
冒頭で申しました、「冷静にマーケットを見る」とはこういったことです。
ファクターという眼鏡を通すことで、「なぜ、この銘柄群は今、好調なのだろう」と、一歩立ち止まって考える癖がついたように思います。
「モメンタム」ファクターのリスク
もう少しリスクの面の事例をお話しします。
「モメンタム」というファクターがあります。
これは、「直近の一定期間に株価が上昇」という特徴によって見出されます。
(細かい定義の違いはいろいろあるようです)
過去、パフォーマンスが良いものは、暫くは好調な時期が続きやすい、、
このようなコンセプトのファクターですね。
経験的にも頷けるものではないでしょうか。
最近で言うと、ハイテクやヘルスケアがこれに当たると考えられます。
一方で、このファクターが持つリスクは、
「相場が反転したときの反動」です。
この点は『ファクター投資入門』でも触れられていまして、
「平均的を上回るリターンが期待できる一方、ファットテールなリスクを抱えている」
…といった趣旨の記述があります。
モメンタム戦略はシャープレシオ(リスク・リターンの比率)が良い一方、
マーケットインのタイミング次第では、その後の「屈辱の期間」が長くなりそうですね、、
少し長くなりましたので、2回に分けてお話しします。
次回は、より具体的に、
「ファクターをどう活用すればいいのか」をテーマにしてまいります。
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