とうとう、直近高値からの下落が10%を超えました。
投資家界隈の話題は、株式市場の暴落一色となっていますね。
こうなってくると、
「株価はいつまで下がり続けるんだ?」
あるいは、
「一体、いつ株価は反転するんだ?」
こうしたことが、気になってきますね。
また、
「今が底値!買うなら今しかない!」
あるいは、
「まだ下がる!今、買うなんてあり得ない!」
といった「予測」も数多く聞こえてくるでしょう。
本日は、そうした声に対する姿勢に関係深い言葉をご紹介いたします。
ハワード・マークス氏自身については、こちらをご覧ください。
「無知を知る」
1つ目の言葉は、なんだか哲学的なものです。
「無知を知る」…いったい、どういうことでしょうか。
投資を成功させるために必要不可欠な条件の1つで、優れた投資家のほとんどが備えている心理的な資質がある。それは、マクロ情勢の先行きはわからないと認識することだ。
…過熱した相場が下落に転じるタイミング、あるいは下げ相場が底に達し、反騰し始めるタイミングを知ることは不可能だ。
ハワード・マークスは、先のことはわからないと素直に認めているのです。
なんだか意外な感じがいたしませんか?
以前の私は、
「優れた投資家は、将来を予測する能力が優れているのだろう!」
…といったイメージを持っていましたので、随分と謙虚だなぁ、という印象を受けました。
ですが、ハワード・マークスはむしろ、そうした「予測」を戒めています。
経済や市場が将来、どの方向に動くかを知っていると思い込んでいる投資家は…将来に何が起きるのかわかっているという前提でアグレッシブな行動をとるが、期待通りの結果が出ることはまれである。
これらの投資家は、物事に付きまとうランダム性と、将来の成り行きに関する確率分布を無視している。このため、自分が予測するたった1つのシナリオに基づいて行動する道を選ぶ。それでうまくいくこともあるが、長期的な成功をもたらすほどの一貫した成果はあげられない。
これは私自身、とても思い当たる節があります。
そうです。私が失敗してきたパターンは、
「しばらくは上がる or 下がる傾向が続くはずだから、○○すべきだ」
というものです。
つまり、単一の未来に賭けて、決め打ちで投資行動に出ることです。
上記の○○の部分には、
「有り金を全部突っ込む」
とか、
「含み損が半端ないけど、今すぐ損切りする」
みたいなものが入ります。
そして、大体はその行動は裏目に出てきたわけです。
さて、では「予測」をしないとなると、
私たちはどのようにして投資の意思決定をすればいいのでしょうか?
スポンサーリンク
「今どこにいるのかを感じとる」
こうした疑問に対して、ハワード・マークスは次のような示唆をくれます。
これから先、どこに向かっていくのかを知ることはできなくても、今どこにいるのかならわかるはずだ。周りの投資家の行動から、いま現在、市場サイクルのどこに位置しているのかを推察することはできる。
他の投資家が懸念知らずのときは慎重に振る舞い、他の投資家がパニックに陥ったときに積極果敢に行動すべきなのだ。
市場サイクル=振り子の動く向きが変わるタイミングや、振れ幅を予測するのは極めて難しい。もしくは、不可能と言って差し支えないかもしれません。
一方で、「今」、自分たちがサイクルのどのあたりに立っているかは理解しうると言うのです。
しかし、彼は決して、「現状ならば簡単にわかる」と言っているのではありません。
現状を理解することですら、「努力を要する」と表現しています。
彼は、「自問せよ」と言います。
その問いの例として、次のようなことを上げています。
- 投資家は楽観的か、悲観的か?
- メディアのコメンテーターの推奨は「買い」か、「売り」か?
- PERは歴史的に見て高いか、低いか?
- イールド・スプレッドは小幅か、大幅か?
- 資金調達は容易か、困難か?
このように、「周り」を見て内省することが何より重要と言います。
周りの言動に反応して行動するのではなく、第三者の視点で客観的に状況を見て、考えたうえで行動せよというわけですね。
今が「バブル」だと感じとれたなら買いを控え、「パニック」だと感じ取れたなら、「買い」の機会を探れというわけです。
つまり、
「人と反対のことをせよ」
と言うわけです。
彼は、こうした周りの「裏をかく」ような思考を「二次的思考」と呼んでいます。
投資においては、卓越した洞察力と二次的思考が重要と説いています。
これは、言うほど簡単ではありません。
人間である以上、どうしても感情の影響を受けますね。
これは仕方のないことです。
ですが、そうした「感情に基づく行動」を乗り越えた先にこそ、大きなチャンスを得る機会があるというわけです。
最後に:「ベストパフォーマンス」は目指さなくてもいい
ここからは、私自身の考えです。
ハワード・マークスの教えは、多くの学びに富んでいます。
そして、多くの投資本と一線を画する点として、
決して具体的に「あれをしろ」「これをしろ」とは言わない点があります。
あくまで彼が与えてくれるのは「示唆」であり、
どうするかを決めるのは自分自身だということです。
これまでご紹介した内容から、
「焦って売りに走るのではなく、勇気を出して買いに向かう」
という投資方針を、私自身は持つことができました。
では次の疑問として、
「いつ、いくら買うか」
こうした命題に遭遇します。
1つの選択肢として、
「底を見極めて一括投資をする」
というものがあります。
最大の投資パフォーマンスを目指すならば、これでしょう。
ですが、私はこうした方針は採らないことといたしました。
なぜなら、私の能力の範囲を超えているからです。
ハワード・マークスさえ、振り子の振れ幅はわからないと言うのです。
どうして、私にそれがわかるでしょうか。
一方で、過去の振れ幅を参考にして、少しずつ、恐る恐る買うことはできます。
例えば、
「下落率が10%に達したら投資余力の10%までを投下する」
「下落率が20%に達したら投資余力の20%までを投下する」…etc
こうしたマイルールを設定できます。(あくまで一例ですよ?)
この方法では、投資効率の最大化は狙えません。
それどころか、下落率が10%に止まれば、投資のチャンスの大部分を逃す可能性もあります。
でも、それでいいのです。
私は、投資は他者との競争だとは考えていません。
私自身のものさしは、「昨日の自分よりも良い状態にあるかどうか」です。
10%分だけでもチャンスをものにできたならラッキーですし、
その後の上昇相場でまた徐々に買い進めれば、利益は得られるのですから。
皆さんにとって、今回の相場の激動が学びとチャンスの機会になることを願っております。
こちらの書籍から言葉を引用しています。
|
これまでの「ハワード・マークス」シリーズはこちらです。