資産形成の灯台

投資・投機との関わり方に関する思索を垂れ流すブログ。

「効果的な金融教育」は永遠のテーマだと思う理由

 

この記事のポイント

  • 金融教育についての議論は、知識伝達の複雑さと不確実性を考慮する必要がある。
  • 言語は記号を通じて意味やイメージを間接的に伝えるが、教育の成功を評価するためには実践的な課題を通じて受け手の行動を観察する必要がある。
  • 大規模言語モデルがインタラクティブな対話で教育を支援し、効果的な教育のスタイルを提案する可能性がある。

 

今日は 金融教育について書いていこうと思う。 直接的な きっかけは 若い人たちの間で 投資詐欺の被害が増えているというものを見たからだ。

 

 

 この問題はそもそも 教育とは何か といったような 一筋縄では行かない問題をはらんでいると思う。

 

私は知識を ポータブルで簡単に他人に伝えられるようなものではないと考えている。  私たちは知識を伝えるというような言葉で表現されるように、相手に何かしらの知恵のようなものが直接的に伝わるという風に考えている。

 

 しかしこれは一種のアナロジーであって、実際に言葉にした知識 なるものが自分の脳から相手の脳へと伝わっていくわけではない。

 言葉という記号を通して 意味 や イメージのようなものが 間接的に相手に伝わるだけである。 

 それは必ずしも 元の言葉を発したものが抱いていた 意味や イメージとは 同じとは限らない。 

 

「投資詐欺に気をつけましょう」みたいな話一つを取っても、情報を発信してる側が意図したような内容が相手に伝わっているとは限らない。 情報の発信側は自分の経験を通して、リアルに そのイメージを感じることができるだろうが、 情報の受け手側はそれを同じように感じられるわけではない。

 単に記号としての言葉を見たり聞いたりして、 既存の自分の脳内にある 似たようなイメージを想起しているだけである。

 「同じ花を見て美しいと言った2人の心と心が今はもう通わない」こともあるわけだが、 そもそもその時に同じような意味 内容や イメージで「美しい」という言葉を使っていたか というのも 怪しいのかもしれない。

 

またその間接的に伝わっていった内容が脳内でどのように 既存の神経回路と混ざっていくか というのも 不確実性が高い話である。 

 

私たちの脳は一種の予測モデルの塊である。 様々なレベルの予測モデルが数えきれないほど存在しており、 外部環境と相互作用 しながら 機能している。  常に同じ事象に対して同じ予測モデルが働くとは限らず、 学習を通して予測モデル同士の優位性の勢力図がアクティブに変わっていく。

 

記号を媒介した新しい情報を取り込めば 予測モデル も更新されることになる。しかしそれは必ずしも 知識を伝えた側が意図したように働くとは限らない。

 人間の脳は自分 や他人が自由に変えることができない 神経回路の塊であり、一般的に教育という言葉でイメージされるように 都合よく、その内容を変えられるものではない。

 

知識が伝わるというのは一種の錯覚であり、 実際にはもっと複雑な過程を経ている。

話がうまく伝わらないとか、 何度言っても行動を変えてくれないとか、そういった話もこれと関係していると思う。

個人的にはやはりこの「 伝わる」という表現がよろしくないと思う。 人間は様々なアナロジーを用いて複雑な事象を理解しようとするわけだが、これはあまりにも物事を簡単に捉えすぎている。  今 述べたように 複数の不確実性が高い 工程を重ねて、 意図した通りに現実が変わったかどうかを考えなければならないのに、極めて単純な工程であるかのように錯覚をしてしまう。 

 

予測モデルが教える側が意図したように 変化しているかどうかを確かめるには、 実践的な課題を通して 教育を受けるものがどのような振る舞いをするかを観察するといったことが必要になる。

 

予測モデルの勢力図の直接的な観測は今の技術ではできないと思われるので、実際にそれが働くところを観察するしかない。

 具体的な状況を設定してそれに対してどのような反応をするかを観察する。そのことによって どういった 予測モデル が脳内で 優勢になっているかを推察するのである。 情報の発信者にとって望ましいような振る舞いをするようであれば、教育は成功したと判断できる。

 

そう考えると、 一方的に情報を発信して「金融教育をした」といったようなことは成立しないのではないかと思われる。  実際に予測モデルがどう変化したか を間接的にでも観察したところまでを以て、 教育と呼べるのではないだろうか。 

 

ただし 一人一人の行動をこのように 追っていって観察をするのは非常にコストがかかる。 通信技術の発達によって情報発信のコストは劇的に下がったが、 インタラクティブかつ継続的に人間の行動を追っていくには手間がかかる。

 

 そこで個人的に期待をしているのは、大規模 言語モデルがトレーニング 相手 や相談役になることである。大規模 言語モデルの特徴は、 時間や空間に関係なく スケールできることである。

 1度に何百人 何千人 何万人という数の相手に対してインタラクティブかつ丁寧な対話をすることができる。

 

 先ほどの例で言えば 実際の投資詐欺のシチュエーションを投げかけて、それに対してどのように反応するのかを観察することができる。 その場でより好ましい対応をアドバイスすることができる。

 もっと言えば、 実際に投資詐欺を持ちかけられている現場をアクティブに監視をさせて、「 これは 投資詐欺 なのではないか」といったようなリアルタイムでのアドバイスをすることもできるかもしれない。 最も こちらはプライバシーの問題や技術的な課題がありそうだが。

 

 こうした風景は従来の教育という言葉から 想起されるイメージとはだいぶ違うと思う。 私たちは学校という現場で教育を受けてきたので、 あの教室で先生から一斉に一方的に情報発信されるというスタイルが教育であるという風な素朴な感覚を持っているのではないか。

 しかし 望ましい 予測モデル= 脳内の神経回路の形成という目的に合致するならば、よりふさわしい教育のスタイルというものが存在するだろう。

 
参考にした書籍は以下の通り。
 

 

 

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