CAPEレシオについて、海外の記事を見ながら今後10年のリターンについて、思うことを書きます。
こちらの記事です。
- 1970‐94年のCAPEレシオ・リターンの関係
- 1994‐2010年のCAPEレシオ・リターンの関係
- CAPEレシオ・リターンの関係性は変化している
- 今後はどうなるんだろうか
- Vanguardの予測も見てみる
- あくまで「10年」の長期予測の話だよ
1970‐94年のCAPEレシオ・リターンの関係
ある時点のCAPEレシオと、その後10年間のS&P500のパフォーマンスの関係を分析したものです。
それぞれを横軸、縦軸にして散布図にしています。
面白いのが、2つの時間軸で分析をしており、全く異なる結果が示されている点です。
1つ目は、1970-94年までです。ちなみに、インフレ調整後の数字です。
こちらは、あまり役に立ちそうにない結果になっています。
CAPEレシオが上限付近=20くらいのときのリターンは、5‐10%程度です。普通に良いっすね。
さらに、CAPEレシオが15‐20くらいのゾーンでは、リターンが▲5‐0%、10‐15%の2つの群に分かれてしまっています。
唯一、CAPEレシオが5‐10のときは、リターンが10%以上は望めそう、、くらいは言えるでしょうか。
1994‐2010年のCAPEレシオ・リターンの関係
2つ目は、1994‐2010年です。
ちなみに、この期間の表記は10年の観測期間の起点を表していますので、最後のデータは2010‐2020年のものを使っています。
こっちは綺麗に反比例の関係が見て取れますね。両者には負の相関があるみたいです。
今の関心事としては、CAPEレシオが高いときにリターンがどうなっているかですが、、CAPEレシオが35以上になると、その後の10年間のリターンは0%近傍~▲5%程度になったようです。インフレ調整後で、ですね。
で、今のCAPEレシオはいくつかと言うと、38程度です。
source: Shiller PE Ratio
CAPEレシオ・リターンの関係性は変化している
さらに記事では、CAPEレシオの水準が持つ意味の変化に触れています。
以前はCAPEレシオが15‐20というのは、あまり予測力の無い数字でした。
一方で、足許の観測期間の結果では、CAPEレシオが15‐20というのは、「お買い得」であることを示唆しています。インフレ調整後で、10年間のリターンは10%‐15%が期待できるからです。
従前からのCAPEレシオの熱心な信奉者は、「CAPEレシオが15以上は高い」という認識を持っていたそうです。私も、15という数字は閾値として何度か目にしたことがあります。
ただ、最近の傾向からすれば、15‐20くらいのレンジであれば寧ろ絶好のタイミングであり、「15以上=割高」を信じた人々は少なくない機会損失を被ってきたわけです。
今後はどうなるんだろうか
この辺までが記事の内容なのですが、気になるのは「今後はどうなんだろう」と言う点です。
「CAPEレシオの適正値が変わりました」というのは、今、過去を振り返って言えることです。バックミラーを見れば、たしかにそう言えるのかもしれませんが、一番知りたいのは将来の話です。
15以上=割高を信じていた人だって、「未来はこうなりまっせ」と知ってりゃ、そりゃ喜んで投資したことでしょう。
直近30年ほどのデータからすると、CAPEレシオが35以上は割高です。
足許の38は、今後10年間のリターンが良くて0%近傍であることを示唆しています。
個人的な感覚としては、いささか悲観的過ぎるかな?と言う気もします。
2つの30年間のデータが示すとおり、CAPEレシオの水準は「底上げ」されているのだと思います。
これはハワード・マークスなども指摘している通り、金融緩和でバリュエーションが拡大しているからでしょう。
金利低下でリスクフリーレートが低下していますし、緩和マネーがじゃぶじゃぶ余って株式等のリスク資産に流れ込んでいます。
CAPEレシオは過去10年間の利益(インフレ調整後)で算出される指標であり、こうした金利水準や流動性を反映していません。
ですので、指標外の要素によって、指標の水準自体が押し上げられているわけです。
なんとなく思うのは、コロナショックでくっそ中銀のBSが拡大してマネー供給量が増えていることなどを考えると、またCAPEレシオの水準も底上げされているのでは?ということです。
そして、テーパリングや利上げは進んでいったとしても、BSの圧縮は簡単にはいかないでしょう。
ただ、さすがに35以上が「割安」なんてこたーないでしょう。
ありそうなメインシナリオとしては、足許の35‐40のゾーンでも、リターン0‐5%くらいはあるんじゃねぇかな、と言う感じです。インフレ調整後で、ですね。
5%刻みのCAPEレシオとリターンの対応関係が、1つずつ押し上げられるようなイメージでしょうか。
Vanguardの予測も見てみる
他に参考になりそうなものとしては、Vanguardの予測があります。
今後、10年間のリターンを予測したものです。たしか、こっちは当然に金利水準なんかも考慮して予測してたはずです。
source: Market perspectives: December 2021
これを見ても、米国株式全体では2.3‐4.3%としています。こっちは名目の表記ですね。インフレの予測値が1.5‐2.5%ですので、実質ベースではその分目減りするのでしょうが。
ちなみに、グロース株は予測レンジの下限がマイナスっすね(白目)
やはり肌感的には「名目でも5%は行ってくれないかもしれんが、0%よりは多いんじゃねぇの」というのが私の乱暴な見通しです。
さすがに、ここ10年のような2ケタに近い成長は見込みづらいでしょう。それでも、株式にベットするのは購買力維持の観点から、まだ妙味がある、、と言う感じですかね。
あくまで「10年」の長期予測の話だよ
忘れちゃいけないのは、これは10年間の長期予測だということです。
つまり、投資してすぐに▲20%とか食らっても「Vanguard先生の嘘つき!」とか言うのはお門違いとうことです。私は、たまにこのことを忘れてしまいます。
だって、10年と言う期間はあまりにも長いんですもの。。
そんなわけですので、つみたてNISAやらiDecoやらは引き続き淡々とやってりゃいいかと思います。まぁ、ドルコスト平均法でやるなら、そもそも時点時点の割高・割安は気にしなくていいと思いますけどね。
応援クリックいただけますと、励みになります!