めっちゃお久しぶりです。くじらです。
最近はまたインプットばかりしてました。
ずっと頭の中で気がかりとなっていたテーマがありまして、
ちょうど、打ってつけの良書があって読みふけっておりました。
本日のテーマは、「長期投資における”暴落”をどう考えるか」です。
多くのネタは、『行動科学と投資 その努力がパフォーマンスを下げる』という本に拠っています。本テーマにご興味があれば、一読をお勧めします。
以下、本書と呼称します。
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ガチホ勢には関係ないテーマ?
このようなテーマを聞くと、
「いや、俺、ガチホの長期インデックス投資なんで関係ないっすよ^^」
…と、おっしゃる方もいると思います。
それはそれで、全くOKです。
投資スタンスもいろいろ、人生いろいろでございます。
そうした方でも、こうした可能性が頭をよぎったことはありませんでしょうか?
「将来、また長期低迷の時代が来て、長期投資が報われなかったらどうしよう」
私は、結構あります。と言いますか、ずっと明確な答えを出せずにいたテーマです。
米国株に投資をしている以上、基本的には長期の右肩上がりの成長を信じています。
しかし、低確率で長期にわたって株価が低迷する時代もあるはずです。
これを示唆するデータとして、本書で次のようなデータが紹介されています。
「バイ・アンド・ホールドがうまくいくときとうまくいかないとき」という記事で魅力的な洞察を披露している。彼は、S&P五〇〇を三〇年間保有しても元の価値を下回る(インフレ調整後)時期が全体の一五%もあることを発見した。実際、一九八五年のS&P五〇〇の価値は、五六年前の一九二九年のピークを下回っていたのだ。もちろん、長期的なインフレ調整後リターンは、全体の八五%の期間はプラスだったが、個人の投資期間すべてをかけても低リターンやマイナスリターンしか得られなければ、あまり慰めにはならない。
先ほど、「低確率で」と申しました。
上記のデータによると、15%の確率で30年投資しても報われないようです。
ちなみに、ネタ元のブログはこちらです。
上記考察はインフレ調整後だったりと前提条件がありますので、
詳細はもとのブログに当たることをお勧めします。
ちなみに、こうしたことが起こる一因として、株価の増減要因の多くは利益よりも、バリュエーションに拠っている点も指摘されています。
ちょうど、低金利によるバリュエーション拡大が著しい今日において、重要な示唆になるのではないでしょうか。
もう一か所、本書より引用します。
「G7のすべての参加国が少なくとも一回は株価が七五%下落した経験を持ち、そうなると投資家はそれを回復するためだけでも三〇〇%の利益が必要になる。個人が一九二〇年代終わりと一九三〇年代初めにアメリカ株に投資したり、一九一〇年代と一九四〇年代のドイツの資産クラス、一九二七年のロシア株、一九四九年の中国株、一九五〇年代半ばのアメリカの不動産、一九八〇年代の日本株、一九九〇年代末の新興市場と商品市場、二〇〇八年のほぼすべての資産に投資したりして保有し続けるのが愚かな行動だったということは間違いない。個人投資家の多くは、リスクの高い資産クラスによる大きなドローダウンを回復するだけの時間的余裕はないからだ」。
こちらは、その株式へ投資してはいけなかったタイミングを、より具体的に記述しています。
要は、「バブルの絶頂で買った分は、救われまへんで」ということです。
ただし、これは一括投資した分のことを指します。
当該期間に投資を始めて、ずっと積み立て投資をしていた場合は別です。
日本のバブルの絶頂に積立投資を初めても救われるとの検証結果も見たことがあります。その間、心が持つかどうかは分かりませんが。
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「パラシュート付きの長期投資」というスタイル
こうしたことを踏まえて、本書では以下のような提言をしている。
市場のタイミングを読むなというのがルールならば、それに例外はあり得るのだろうか。私はあると思う。これは、頻繁でないことや、導入するには痛みを伴うことや、正しいという感覚とは逆だという点で、行動科学的なコントラリアン投資とも一致している。ハワード・マークスは、リスクのひねくれた性格について、「リスクは最もなさそうなときに最も起こる」と言っている。 そのため、行動科学的投資家は慎重に破綻を避けながら、最大の収穫を得るためのシステムを作る必要がある。これはたいていは投資を続けるということである(市場はたいていは上昇している)。一八七二~二〇〇三年にかけて、S&P五〇〇は全体の六三%の時期は上昇し、三七%の時期は下落していた。ただ、ファースト・トラストの調査は、問題が起こったときは行動科学の観点から見たパラシュートが必要であることを示唆している。平均的なブル相場は平均的なベア相場よりもはるかに長いが(八・九年対一・三年)、ベア相場の累積損失は、平均四一%に上る。しかも、このような惨事は損失という明らかな害をもたらすだけでなく、行動科学の観点から見た障害はさらに大きい可能性もある。資産が四一%も減ったのにリスクに対する適切な姿勢を維持できる人はあまりいないからだ。
要は、
- 市場では、ときどき、リターンを根こそぎ破壊する暴落が起きる
- これにまったく備えないのは、合理的ではない
- 市場の暴落に備えたシステム=投資ルールを構築する必要がある
…といったことを言っています。
この前のコロナの暴落はかわいいもので、下落幅は30%程度でした。
さらに救いだったのは、ベア相場の期間が極めて短かったことです。
今はもう、皆さん、3月の暗い気持ちなんて忘れてますでしょう?
どちらかと言うと、「市場に置いて行かれる焦燥感」の方が強い方も、多いのではないでしょうか。
しかし、これが例えば50%、60%、70%の暴落であり、
今もじわじわと下落を続けていたら、どうでしょうか?
冷静に、「売った方がいいのか、持ち続けた方がいいのか」を判断できる方は、
どれくらいいらっしゃるでしょうか?
(そもそも、そうした状況下で「正しいジャッジなるものが存在するのか?」という問題もある)
ちなみに私は、さっぱり自信がないです。
自分が思っている以上に、私は衝動的な人間であることを、私は少しだけ理解しています。
人の心は、弱い。
というか、人の心は投資向きには出来ていない。
であるからこそ、破壊的な暴落の影が見えた時に、市場から脱出するパラシュートが必要なのです。
インデックスによる積み立て&ガチホを基本としつつも、破壊的な衝撃を避ける道だってあるはずなのです。
では、どんなパラシュートがあるのか?
じゃあ、具体的にどうしたらいいのさってとこですが、
大きく分けて、
- 暴落の兆候を捉えて、事前にポジションを減らす
- 下落率が規定値を超えたら、事後的に降りる
…という2種類があるかなぁと思います。
事前察知型
「兆候が見えたら、まずは一旦降りる」というスタンス。
まぁ、それが出来たら苦労しないよね、である。
難しいのはわかっているけど、チャレンジする価値はあると思う。
最近の急落(9月初旬のやつね)も踏まえて、
次のような指標を週一くらいでウォッチしている。
SKEW指数
ざっくり言うと、
- ブラックスワン指数と呼ばれている。
- 大きな暴落が起きる前に上昇するとされている。
- 極端に悲観的なプットオプションを買っている人が増えると上がる設計。
って感じです。細かいことはわかってないので、話半分でお願いします。
あくまで一例ですが、
株価が100ドルの時に85ドルのプットオプションを買っている人がいるとします。
プットオプションは売る権利ですので、「株価が100ドルなのに、85ドルで売る権利が何の役に立つのwww」と言うわけです。
でも、これが株価が50ドルまで下がる可能性が高いならどうでしょう。
そういうことを考えて、実際にアクションを起こす人が増えると上がる指数なのです。
なお、最近の急落の前を見てみると、SKEW指数が150近辺まで上がると、「なんかきな臭いっすね」って感じみたいです。
逆に、110台まで下がると、「そろそろ底かな?」って感じですかね。
以下、TradingViewでSKEW指数とSPYを並べてみた。
急落は、そこそこ先行する感じかしらね。逆に、底打ちは少しだけ遅行するように見えますね。。
まぁ、いずれも安全運転にはよろしいのではないですかね?
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VIXと株価の相関
これは最近のソフトバンクによるコールオプション買いで話題になりましたね。それがきっかけで、私もお勉強しました。
要は、
- VIXと株価は通常、逆相関なのだが、
- 両者の相関が強くなった時、近いうちに急落するかもしれない
という理解です。
背景としては、
- コールオプションの買いが増える
- オプション買いでVIXは上がる
- オプションの売り手のヘッジで、現物株が買われる
- 結果、VIXも株価も上がる
という構図に拠っているとの理解です。
これはTrading Viewの設定をいじって可視化すると、分かりやすいかなぁと思います。
以下のTwitterの投稿では、AAPL版のVIXを使って可視化しています。
「AAPLのVIX、、そんなもんがあるのか」って感じですが、あるんですね。
普通のVIXでもやったのですが、こっちの方がはっきりとシグナルが出ますね。
やはり、人気の個別株の方がターゲットにされやすいからですかね?
相関の設定は、たしか3日間くらいです。
分かりやすくするために短めにしてますが、騙しのシグナルも増えてしまいます。
デフォルトの20日間の方がより継続的な兆候を掴めるので、併用する感じですかね。
VXAPL(AAPL版のVIX)とAAPLは同時に上昇🍎
— くじら🐋@積立&気絶中😇😇😇 (@lighthouse4u1) October 12, 2020
最近の急落前を見ると、継続的な両者の相関の高まりが見られる。少し警戒してウォッチする👀
ただ、まだ1日程度だし、心配し過ぎるほどではないとの認識。 pic.twitter.com/TlpS307Fzb
事後対応型
「ある程度食らっちゃったら、大人しく撤退」というスタンス。
これは非常に痛みを伴う戦略で、「15%下がったら、その時点で強制的に売る」みたいなものである。
これをルールに基づかない、ジャッジのみでやるのは非常に厳しい。
だって、売った瞬間に上がるかもしれないじゃないですか!
それに、折角、利が乗ってたのに、15%も下がったタイミングで売るなんて、、
これは、人間の心理に反する行為である。
しかし、市場が50%下がったならば、こんな思いは甘っちょろい戯言に変わっている。
「なぜ、たったの15%で済むときに売らなかったんだ!」
こう言って、自分を責めることになる。
こうした事態を避けるため、ルールベースの売買をされている方々がいるそうな。
システムトレード(シストレ)と言うらしい。
本書で勧めているのも、こうしたルールベースの投資である。
私、ここは全然詳しくないので、本日書くこともめっちゃ断片的な知識なのでご注意いただきたい。
例えば、
- 200日移動平均線の上にいるときだけ株を保有して、下回ったらキャッシュに換える
- 2つの移動平均線がゴールデンクロスしたときに株式で保有して、デッドクロスしたらキャッシュに換える
…などといったものである。
そこに判断の要素はなく、機械的に(あるいは機械が)売買するのである。
皆さんおなじみ(?)の、Portfolio Visualizerでもバックテストができる。↓これね。
例えば、QQQで1999~2020年、10ヵ月移動平均線で試すと、こんな感じである。
青が本戦略、赤がBuy&Holdである。
移動平均線を上回っている間は株式で、下回ったらキャッシュにスイッチしている。
この結果を見て思うのは、
- 2000年や2008年の大きなクラッシュは、うまく避けられている。
- 代わりに、閾値を跨ぐか微妙なところでは、無駄な売買となっている。
特に、ハイボラな強気相場ではこの傾向が強くなりそう。 - この「無駄な売買」が、本戦略のコストなのだろう。
…と言ったことだ。
なお、「なんで最終的に追いつかれているんですかねぇ」というと、
表では見えないが微妙に1~5日くらい、キャッシュに移行している期間がちょこちょことあるからだ。
くっそ微妙に閾値跨いで売ったのだが、翌日とかに反騰して損失を被るパターンである。
ただ、こうした点を補うために、さらにルールを追加してみるとか、いろいろと工夫の余地は大きそうに思う。と言うか、それを突き詰めていったのがアルゴの世界なのだと思うし、、
そっちの知識がヨワヨワな私は、ひとまず以上のような単純なルールベースから始めて、少しずつ改良していこうかと思っている次第である。
なお、先ほど紹介したThe Fat Pitchでもこうした投資戦略が紹介されている。
他にも参考になる記事が盛りだくさんなので、是非、ご覧いただければと思う。
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