資産形成の灯台

様々な投資戦略の学習・実践中。最も尊敬する投資家はハワード・マークスです。

『ゴールベース資産管理入門』とインカムについて

どうも。くじらです。

ゴールベース資産管理入門という本を読んだ。これ自体は資産運用コンサルを職業とする方向けの本なのだが、退職資金目的で運用する個人の側から読んでも、なかなかに面白い内容だ。

少し内容の要点をかいつまんだうえで、今日は「インカム」について書きたい。

 

投資はゴールベースで考える

本書の内容を簡単にまとめると、以下のような感じ。

  • あくまでゴールベース!
  • 目的に沿ったゴールを達成できるかどうかだけを見続ける。
  • どのくらいの期間で、CPI+●%を達成するか
  • パフォーマンスを下げるあらゆる行動ギャップの原因を遠ざける!
  • 人と比べない。市場平均とも比べない。
  • ポケット、フレーミングといった心理学的な概念の活用
  • 目的に沿ったパフォーマンスレビューのインターフェース
    i.e. 戦略別の比較ベンチマークの設定など

この「ゴールベース」というのは、要は「退職に必要な購買力を得る・維持する」ということだ。

株式投資などに少しでも触れた方は首肯していただけると思うのだが、「儲けたい」に天井はない。最初は●万円も儲かれば十分と思っていても、それを達成してしまうとすぐにさらに上を目指したくなる。

 

この思いは、他人と自分を比較し始めることでさらに加速する。私は、こうした欲や競争心は自身を向上させるタネであって悪いものとは思わない。が、じゃあ実際に投資パフォーマンスにどんな影響を与えるんだいと聞かれたら、多くの人はマイナスに働くんじゃないですかねと答えるだろう。

最近のアルケゴス問題を見ても、1兆円持っててもさらに欲しくなるし、1兆円稼げるような人でも踏み込み過ぎて失敗する…というのは示唆深いと思う。私は凡人なので、本能のままに行動していたら「買えば天井、売れば大底」を地で行く自信がある。

 

そんな感じで「儲ける」こと自体を目的にすると際限がないうえに、いつかはアクセル踏み過ぎるので、とにかく本来の「ゴール」だけを見ましょ、というのが本書のコンセプトだ。

そのために、目的別に具体的な運用期間と目標利回りを設定して運用する。その際、とにかく、本来の目的から注意をそらされるようなものは見せない。他人のパフォーマンス…とくに、ベンチマークとしてのインデックスの成績と比べるなんてことは、ご法度としている。

これは徹底していて、途中結果としてのパフォーマンスレビューの際に顧客に見せる図表なんかも、以下のような感じになっている。

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出典:ゴールベース資産管理入門

 

注目してほしいのは、よくある「S&P500と比べるとこうです」みたいなのが無いのだ。左上にあるのが目的別の投資プラン(本書では「ポケット」と呼んでいる)なのだが、あくまでこいつらがどうなったか…特に、当初の目標利回りを達成できているかどうかにフォーカスしている。

さらに「これは面白いな」と思ったのが、以下の図だ。

 

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出典:ゴールベース資産管理入門

 

例えば、左上の図は「安全」プランのパフォーマンスを示すものだ。多くの場合、これを示す場合は「うーん、株式ベンチマークに対して期間内の期待パフォーマンスは劣後してますね」みたいな感じじゃなかろうか。

しかし、あくまで「安全」プランの目的は”資産の目減りを抑制して購買力を維持する”ことなので、これを「期間内における下落を最小限に抑えられている」と評価する。これはある種のフレーミングというやつであり、同じ事象を別の視点から捉えると全く異なる評価になる心理学的効果を狙ったものだ。

 

他の図表も、あくまでそれぞれのプランの目的に沿った比較対象を選定して、当初の目的を達成できていることを示している。

このように、投資資金を目的別の「ポケット」(投資プラン)に分けて管理し、当初の目的を”思い出させてくれる”レビュー方法でモニタリングしていく…と言うのが、本書で勧めている資産運用の方法だ。とにかく、脇目を振らせないための仕掛けが散りばめられている。

 

人によっては「見せ方の問題じゃねーか」と思うかもしれないが、私は「おー、よー考えられてるなぁ」と感心してしまった。人間の脳はバグだらけなので、「見せ方」で180度、評価が変わることはよくある。くだらないと思うかもしれないが、(自分自身を含めて)人間を相手にする以上、この見せ方の問題からは逃れられない。

どんなに素晴らしいものでも、見た目にちょっとした瑕疵があるだけで本来の価値を認められないことがあるし、その逆も然りだ。若いころは資料の細かい部分に拘る上司を理解できなかったが、今ではそれが、ある種の”必要条件”であることは理解できる。(十分条件とは、さすがに今でも言いたくはない)

自分の目的に合致するなら、この手の脳のバグを逆手にとった方法は、利用したほうがうまくいくことが多いと思う(言い方がアレですが、称賛しています)。

インカムをどう扱うか

で、やっとインカムの話だ。ここで言うインカムとは、例えば高配当株投資やら債券投資のように、定期的な利子・配当収入を目的とした投資だ。

面白いと思ったのは、本書ではインカムは「必要な人と、そうでない人がいる」ことを前提にしているように読めることだ。具体的に「こういう人はインカムが必要ですねー」みたいなことはほとんど書いてないのだが、例えば以下の図だとインカムが無い投資プランの組み合わせも存在している。

 

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出典:ゴールベース資産管理入門

 

また、リスク・リターンの文脈でも、他の投資プランとは別ベクトルになっているっぽい。以下は私が別目的で勝手に作ったスライドだが、こんなイメージだ。

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出典:ゴールベース資産管理入門を基に私が作成

 

また、必要性を示唆する記述としては、以下の図に「今の生活スタイルを支えるために必要なもの」と言うのがある。

 

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出典:ゴールベース資産管理入門

 

まぁ、この「実際の生活上の必要性」がインカム投資の存在理由なのは考えてみりゃ当たり前なんだが、なんかこう、日本のネット上で見るものは「インカム投資のパフォーマンスが優れているかどうか」と言う視点の言論が多くて、逆にこれを新鮮に感じてしまったのだ。

…と、今自分で「日本」と書いてしまったが、源流はシーゲル先生の配当再投資のロジックも多いだろうから、特に地域を限定した話ではないのかもしれないとも思った。

 

まぁとにかく、インカム(キャッシュフロー)は他の論点とは毛色が異なる。パフォーマンス云々よりも、(本来は?)実際の生活上の必要性に根差したものだからだ。退職者の場合は、生活費だけでなく、QOLを上げるための遊興費等としてもインカムが欲しいというニーズがあるはずだ。実際、うちの親父殿もすでに引退済だが、趣味を満喫するには先立つものが必要である。その文脈で毎月分配型のブラジルレアル建ての投資商品を買っていくというストロングスタイルのムーブをかましていたりもしたが、とにかく、そういうニーズはあるのだ。

消費によるQOLの最大化>資産の最大化、という考え方を持つのであれば、10年後のパフォーマンスの最大化よりも、パフォーマンスが下がっても定期的に消費に使えるインカムが手に入る方がいいだろう。そのうえで、出来るだけ元本を減らさないようにリスクを取って運用もすると。このように「資金として使いつつも、運用したい」という資金需要ニーズと運用ニーズの両方を満たさなければならない場合に、論点化するのだと思う。

 

逆に、「インカムは要らない、純粋に運用資金としてロックされて構わない」と言う場合には、一切、考慮しなくてよい。また、「インデックス投資をしつつ、自分で考えながら取り崩す」と言う場合も、インカムを目的とした投資は不要だろう。だが、これまたうちの親父殿を見ていても、毎月あれこれ考えながら取り崩すのはぶっちゃけくっそダルそうである。もともと金融的なことに興味関心があって管理スキーな人は別だろうが、普通の人は「んなことやってらんねーよ」という感じなのが私の偏見たっぷりの認識である。

 

ちなみに、投信の自動定率売却サービスなんてのもあるので、これはインカム投資のオルタナティブになるかもなーとも思った。これならダルくないでしょ。

そんなわけで、ゴールベース資産管理入門、色々と思索のヒントになる本でございました。本書の趣旨に沿って、「インカム投資が優れているかどうかなんて忘れて、本来の目的に立ち返ろうぜ」も悪くないのではないでしょうか。

 

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