日本でも成功報酬型の投資信託が出てきました。
農林中金バリューインベストメンツが4月に発売する商品です。
主な特徴は以下の通りです。
- アクティブファンドにもかかわらず、信託報酬は0.3%
- 基準価格が高値を更新したときのみ、運用報酬が発生
- 運用報酬は高値更新時の値上がり分の10%
引用元は以下の日経の記事です。
本日は、このトピックについて掘り下げます。
背景は手数料の低額化・無料化
こうした投信の登場の背景には、
- 販売手数料の無料化
- 信託報酬の低額化
この2つのトレンドが関係深いと考えます。
金融庁や偉大な投資家の先人達による啓発活動の結果、「長期投資ではコストをいかに抑えるかがカギ」との認識が広まりました。
その結果、以前は普通に売れていた
「販売手数料3%!」
「信託報酬1.5%!(インデックスファンドなのに)」
みたいな、キメ過ぎておかしくなっているとしか思えない商品が売れなくなってきました。
その代わりに、
- 安く or 無料で買えて、
- 持ち続けている間のコストも安い
投資信託に対する需要が高まっていったのです。
その期待に応える形で、主にネット証券を中心にして、
ノーロード(販売手数料無料)、低信託報酬の優良な投信が増えてきました。
一方で、「売る側」にとっては、
「どこで儲けるか」
これが課題となってきました。
以前のように、売ってしまえば高い手数料を取れるわけではないのですから。
この商売が成り立たせる1つの解は、とにかく規模を追うことです。
例えば、米国のブラックロック社がはるかに安い信託報酬でも成り立っているのは、
資産の運用規模が桁違いだからです。
同じ信託報酬0.1%でも、運用規模800兆円の同社と、運用規模が数十億~数千億円の日本勢では全く収益額が違います。
ちなみに、日本の公募投信・私募投信を合わせた金額は234兆円だそうです。
1社で800兆円、、うーん。意味わからん金額ですね。
データソースはこちらです。
そうした背景で生まれたもう1つの解が、今回の、
「成功報酬で儲ける」
ということなのでしょう。
運用サイドに「価値の最大化」を目指す強力なインセンティブが働く
この成功報酬型の買い手にとってのメリットは、
運用者に、「運用資産の価値の最大化」を目指すインセンティブが働く
ということでしょう。
信託報酬は0.3%ありますが、運用会社に入ってくるのは販売会社や信託銀行にコストを支払った残りです。
そうなると、運用会社が儲けようとするには、運用資産の高値を更新し続けなければならないわけです。
逆に、従来型の投信には、こうしたインセンティブが働きません。
極端な話、1度売ってしまえば、あとは顧客の資産がどうなろうが構わないのです。
なぜなら、勝手に年1~3%程度の手数料が転がり込んでくるのですから。
当然、そうした投信は解約による資金流出が起きます。
ですから、運用会社側は「次々に新商品を出して新規顧客を獲得し続ける」という焼き畑農業みたいな商売に走るわけです。
こうした、
「顧客にリスクを押し付けて、自分たちはリスクを負わずに過度に儲ける」
という商売は、最も忌むべきものです。
社会的に存在意義がないばかりか、存在自体が国民の資産形成の弊害になっていると言ってよいでしょう。
運用会社のポリシーは明確な長期運用志向
もう1つの注目点は、
運用会社が明確な長期運用を打ち出している
という点です。
実は、私の本業の関係で運用会社のCIOの方のお話を、あるセミナーでお聞きする機会がありました。
その時に強調されていたことは、
- その企業が無ければ産業が成立しないような企業
- その産業がなければ世界中が困るような企業
- 高い参入障壁により競争優位を持つ企業
こうした企業に対する、長期厳選投資をするというものです。
こうした企業は長期的に価値が増大していくものであるため、売る必要がない。売買で儲けるのではなく、企業価値の増大、利益の積み上げの結果による果実を得ることを目指す。
この考え方は、1人の個人投資家としても、大いに共感するものです。
より詳しい内容は、同社のホームページにあります。
1度、ご覧いただくと、きっと参考になるものがあると思います。
結論:運用会社の「覚悟」を信じてみるのもよいのでは?
以上の通り、個人的には非常に好感の持てる内容です。
あとは成功報酬等が高い安いといった議論はあるのかもしれませんが、
まずは「個人投資家とリスクをシェアする」という姿勢を打ち出したことが評価されてよいのではないでしょうか。
こうした運用哲学とインセンティブがマッチした商品は意外に少ないです。
まずは少額でも、こうした先へ投資するのも良いかと考えます。