市場がきな臭いニュースであふれていますね。
先ほどTwitterでつぶやきましたが、
EU圏の4-6月GDP(通期換算)が▲24%とかいう意味の分からない数字になっていました。
なんだこの数字は…
— くじら@資産形成ブログ運営中 (@lighthouse4u1) 2020年3月21日
ユーロ圏の4~6月の成長率(年率換算)はマイナス24%――。ドイツ銀行は18日に新たな経済予測を示し、欧州が「深刻な景気後退」に陥ると警告した。
https://t.co/zlgUmXy17i
これまで生み出していた価値の1/4が消えうせるのです。
果たしてどれほどの企業が、こうした事態を想定した運営をしているでしょうか。
一般的に、将来のリスクシナリオに備えれば備えるほど、
将来の成長を犠牲にすることになります。
一番簡単なのは、手元資金を厚めに確保しておくことですね。
一方で、その資金を事業に回せば期待される利回りを得ることができるわけです。
いつものことながら、株主からの「利益をあげろ」との突き上げもきついでしょう。
果たして、どれだけの企業が、今回の危機に対応できるだけの備えをしているでしょうか。
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「一括投資のススメ」に対する違和感
そんな中、 らくからちゃさんのブログ記事、『大暴落のときに個人投資家が考えるべきこと』を読ませていただきました。
その中で触れられていた将来の想定に関するお話をきっかけに、
ちょうど、私が今年の初めにモヤモヤと言語化できずにいたことを、
改めて考える機会をいただきました。
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分散投資 vs 一括投資という神学論争
私が年初にモヤモヤを感じていたのは、こちらの記事です。
こちらの記事を書かれた方は、
分散投資よりも一括投資を勧められていますね。
(投資タイミング的な意味での分散 or 一括です)
今回の論点に関する趣旨を抜き出しますと、
- 市場は概ね、効率的である
- すべての情報は、株価に織り込み済である
- 個人投資家が平均を超える利益を得らえる非効率性は存在しない
- 投資タイミングを読む行為は、逆にパフォーマンスへ悪影響を与える
(平均的なリターンをアンダーパフォームする) - 従って、個人は自身のリスク許容度に応じた金額を一括投資するべきである
こういったことと思います。
(論旨を曲解していましたら、申し訳ありません)
初めに申しておきますと、
私はこちらの記事の著者の方自身を否定する意図はまったくございません。
むしろ、投資において大切なことを考える機会を
くださったことに大変感謝しております。
今回の暴落と、こうした考察を通して、
私たちは「投資」と言う行為について、
実感を伴う理解を深めることができるでしょう。
投資は結局、自分自身の選択によって行うものです。
つまり、極めて個人的な営みなのです。
他所様の投資に関する信念や行動について、
どうこう言う意図は全くございません。
あくまで、自分自身の考えの整理が目的なのです。
そういった文脈で、私自身が感じた違和感について、
今回は書いていきたいと思います。
一括投資にこんな違和感を感じたんだ
この記事を目にした時、
私はほとんどのリスク資産を現金化していました。
某国内No.1投信に絶望を感じて、
新たな投資対象と投資スタイルの再考を本気で考えていた時です。
そんな中、初めてこの記事を目にしたときの素朴な感想は、
- 「え?暴落待って投資してもよくね?」
- 「その投資方法、暴落したら『普通の人』は耐えられなくね?」
というものでした。
違和感の正体は何だろうか?
こうしたことを考えるときは、
「その主張は、どんな暗黙の前提を置いてるだろうか」
これを考えることが重要だと思います。
「AだからBである」という主張は、
実は「AはCである」という暗黙の前提を下敷きにしていたりします。
なにか主張を目にしたときにモヤモヤを感じるのは、
主張そのものよりも、暗黙の前提の方に引っかかっている可能性があります。
どういった暗黙の前提を置いているのだろう?
そんなわけで、改めて「暗黙の前提」について考えていきます。
大きく分けて、
- ヒト
- 将来
- 市場
この3つの切り口から考えていきます。
ヒト
記事のタイトルにもあるとおり、
「普通の人」を前提にした投資方法のようです。
では、この投資方法はどんな「普通の人」を想定しているのでしょうか。
おそらく、こんな特徴を持つ人だと考えます。
- 鋼のメンタルを持っている
- 「暴落なんかに屈したりしない!」
- 含み損を10年、20年抱え続ける覚悟ができている
- 買った瞬間に暴落しても、動揺しない
- 少なくとも、投げ売りしないほどには冷静でいられる
- 正しく自分のリスク許容度を計算できる
全然MECEではありませんが、気にしないでください。
記事を読む限り、この投資方法を成功させるには、
こうした特徴を持った人物である必要があると考えます。
重要な話として、
- こうした一括投資を「始められる」ということと、
- それを「続けられる」ということは別問題です。
前者のハードルは比較的低いですが、
後者を可能とする資質は、かなりレアなような気がいたします。
将来
記事中では、想定外の事象で現金が必要になったときの対応を、
以下のように示されています。
例えばフルインベストメントしている人が、予想以上に現金が必要になったときは、必要なぶんだけリスク資産の一部を売却すればよいです。
そこは躊躇する必要はまったくありません。必要なときはどんどんお金は使いましょう。
資産運用とは、あくまで資産のうち「適切な割合」をリスク資産にしておくということです。
こちらの主張の前提として、こうしたものがあるのではないかと考えます。
「投資が失敗とみなされるほどの引き出しが必要となるようなストレス事象は発生しない」
例えば、リストラや大きな病気・ケガによって、失業保険では賄いきれないほどの経済的なストレス状態に晒される、、など。
想定外の支出をリスク資産の切り崩しでまかなう場合、そして、それが暴落時に起きた場合、生涯を通しての投資効率の低下は致命的になる可能性があります。
あらかじめ、生活防衛資金を取り分けておけば、
その金額をそのまま使うことができます。
一方で、暴落時はリスク資産が50%減ったりします。半分ですね。
仮にその半分を切り崩して損失確定した場合、
元の金額に戻るには株価が4倍になってくれる必要があります。
- 100万円を投資して、
- それが50万円になって、
- その半分の25万円を使ってしまった場合、
- 100万円にもどるには株価が4倍になる必要がある
こういうことです。
この状況を、
「投資に失敗した」
このように捉える人は多いのではないでしょうか。
将来を読むことはできません。
これは、私自身も強く持つ信念です。
フルインベストメントをするという行為は、その行為自体がこうした将来の不確実性を否定しているとは言えないでしょうか。
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市場
市場については、「効率的」であるとの主張が記事中にあります。
ですので論点は、「どれほど効率的なのか」という点でしょう。
これはなかなか、難しい論点ですね。
それを測るヒントとして、以下のような文があります。
これは、「現金を貯めておいて暴落時に買うのは、なぜ成功しないと思うのか」という質問に対する著者の回答です。
そのような「今は高値だから」という情報はとっくに市場に織り込み済みです。
もし、それが本当ならば、プロ中のプロたちは売却をはるか昔に終わらせています。それらの材料を考慮して適正な値に下がった結果が今の価格です。
ここから察するに、市場は「相当に」効率的と考えられていると思います。
一方で、この「プロ」の方々は、
- 運用が上手と言うよりも、
- 運用で飯を食っている人たち
という点も考慮すべきかと感じます。
私の好きな著名投資家のハワード・マークス率いるオークツリーのように、
明確に逆張り投資を志向している人たちもいると思います。
一方で、多くの運用機関の担当者は、
- 周りの同僚や競合相手が利益を上げ続ける順張り相場で、
- 自分もそのチキンレースに乗らないわけにはいかない。
こうした現実を抱える人たちではないかと思います。
彼らはたとえ「今は高値だから」と認識していたとしても、
売却してポジションを解消するという選択を取るでしょうか。
上司から、
「君は、どうして更なるリターンを追求しないのだね?」
「自分に払われている報酬の意味がわかっているのかね?」
などと言われるのかどうかわかりませんが、
似たようなプレッシャーを感じながら仕事をしているのでしょう。
明確なデータがあるわけではありませんが、
今回の暴落の落ち方を見ていると、
そんなに外した見方ではないと感じています。
彼らにも損切りルールがあるようですので。
こうしたプロが取引の大半を占める市場は、
果たしてどこまで効率的でしょうか。
より近い現実は?
さて、記事では上記のようなことを暗黙の前提としていると考えます。
一方で、より現実に近いのは次のようなものではないでしょうか。
ヒト
「普通の人」とは、次のような特徴を持った方だと考えます。
- 特別にメンタルが強いわけではない
- 暴落が起きたら動揺する
- 特に、一括投資の直後に下がったら自身の行動を後悔する
- 10年~20年待つことを考えて絶望する
- 耐えきれず、投げ売りしてしまう
- 以上のような自分の「リスク許容度」を、暴落が起きてから初めて自覚する
以上について、投資額が大きい場合は、
より強い反応が起きるのではないでしょうか。
証券口座を見なければいいという声もあるかもしれません。
しかし、それを実践するのもまた難しいでしょう。
自分の大事な資産が目の前の暴落でどうなったか、
確認したくなるのが人の性だと思います。
それをサポートする材料になるかわかりませんが、
こうした画像もTwitterで話題になっています。
将来
将来の想定については、らくからちゃさんのブログ記事、『大暴落のときに個人投資家が考えるべきこと』 でわかりやすいお話をされています。
この例はドルコスト平均法での継続性に対して警鐘を鳴らされているものですが、
一括投資の場合は、事態はより深刻と言えるでしょう。
これから起こることは、
- 株価は継続的に下落して最高値の50%近くまで落ちる可能性がある
- いま買った株は場合によっては最悪数十年含み損を抱える可能性がある
- 企業の業績はますます悪化してボーナスカット、最悪リストラの可能性がある
などでしょうか。
こうした状況下にまず行うべきことは「財務状況の継続性の確認」です。いわゆる「ドルコスト平均法」で定期的に株式を買い付けて、長期間売らずに保有する戦略を取っているひとは、いまのペースでの投資がどの程度できるのかを再度見直すべきです。
毎月定額買付を行うのであれば、生活防衛資金とは別に投資予備資金を最低2年分は用意し、例えボーナスカットされようともリストラされたとしても、継続して投資するだけの余力が無いと「景気の良い時だけ買付法」になってしまいます。
今後、給料カットやリストラが当たり前のようになされるでしょう。
それどころか、勤め先が倒産することもあるかもしれません。
そうしたときにリスク資産に手を付ければ、
先ほどのような「投資の失敗」を強いられることが想像されます。
市場
市場の効率性については、先ほど粗方、書いてしまいましたね。
私の実感を改めて申しますと、
「市場は効率的な部分もあれば、極めて非効率な部分もある」
ということです。
どちらの割合がどの程度大きいか、
といったことは、私にはさっぱりわかりません。
しかし、
「投資をするうえで見逃すわけにはいかない非効率性が存在する」
この点については、確信を持っています。
非効率性の要因について、もう少し述べますと、
- 人の心理、特に恐怖と欲望が相場の動きを過剰に増幅する
- そもそも、今回のコロナのような未知の事象は、どんなに市場が効率的だろうと織り込みようがない
- そして、未経験の事象に対しては、心理的要因がさらに強く作用する
こういったことだと考えます。
唯一の救いは、こうした負の側面は「儲けるチャンス」と表裏一体だということです。
著名投資家のハワード・マークスも、
「市場の非効率性はリスクであり、リターンの源泉でもある」
といった趣旨のことを著書に書いています。
逆に言えば、敢えてこうしたチャンスを捨てることもないでしょう。
もし運よく市場の非効率性に気づけたなら、
投資のタイミングを遅らせたって良いと思います。
(実際はそんなに簡単ではないのですが、、)
効率性よりも腹落ちできる投資方法を
というわけで、長々と一括投資に対する思いを書き連ねてまいりました。
繰り返しになりますが、
最後に投資の判断を下すのは自分自身です。
先人の話や周りの意見は大いに参考にするべきだと思います。
しかし、それらは自分が損失を被ったときに、
損失を補填してくれるわけではありません。
結局、自分自身の資産を守れるかどうかは、
これまでの自分自身の判断に掛かっているのです。
ですから、「効率性」や「ベストプラクティス」を追うのではなく、
「こういうことが起きたら、自分の資産はどうなってしまうのか」
といった、想像力を目いっぱいに働かせて、
自分自身が腹落ちできる投資方法を選択して欲しいのです。
皆さんがこれからの厳しい時をやり過ごし、
ともにリターンを謳歌できる時期を迎えられることを強く願っております。
分散投資と一括投資については、過去の記事もよろしければご覧ください。
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