本日は、その判断を助ける「目安」について、ご紹介したいと思います。
将来のための教訓を得ることも試みたいと思います。
結論:PERに注目しよう
先に結論を申しますと、
「PER」という指標に注目しよう
こういうことになります。
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投資中級者以上の方にとっては、「なんだPERか、、」という感じですね(笑)
私なりの解釈も交えてお話ししたいと思いますので、
お詳しい方も、生暖かい目で見ていただければと思います。
PERとは何か?
PERとは、Price Eearning Ratioの略です。
次の計算式で導き出すことができます。
PER = 株価 ÷ 1株当たり当期純利益(EPS*)
*EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数
平たく言いますと、
「投資家がその株式を足元の利益=稼ぐ力の何倍で買っているのか」
と言う指標ですね。
別の言い方をすると、投資家によるバリュエーション(評価、値段付け)の結果です。
もう少し、細かい部分も見ていきましょう。
- 当期純利益は、(多くの場合)今後1年の決算の予想値を使う。なぜなら、株価は将来予想を先取りするから。
- 当期純利益は、(ざっくり言って)配当原資+純資産だ。つまり、いずれも株主に帰属する投資回収原資だ。
上記からPERは、
「投資家が投資回収にかかる期間を表現している」
とも言えますね。
買う価格を、1年当たりの投資回収原資(=利益)で割っているわけです。
例えば、PER13倍なら、投資家は13年で投資元本を回収できる、と解釈できます。
※ 実際には税金だなんだと色んな要素がありますので、あくまで理論上の話ですね。
これを踏まえて「PERが高い」という状況を解釈すると、
- 今後1年の業績予想が前提だと、長い投資回収期間が掛かるのに買っている。
- 投資家は、「この会社の実力はこんなもんじゃない」「もっと稼ぐ力を伸ばして、早く投資回収ができる」と考えているかもしれない。
といった考え方ができそうです。
逆に、「PERが低い」という状況を解釈すると、
- 今後1年の業績予想が前提だと、さっさと投資回収ができるのに価格が低いままになっている。
- 投資家は、「いくら安くたって、将来性がないよ」「どんどん稼ぐ力が失われていくんじゃないの?」と考えているかもしれない。
といった考え方ができそうです。
いずれにせよ、PERには投資家のバリュエーションが反映されているわけですね。
「強気」「弱気」というやつですね。
そして、今後の成長期待が高い企業ほど、PERは高くなるわけです。
(まぁ、もっとプリミティブな理由で高いケースの方が多いのかもしれませんが、、)
ちなみに、先ほどの式は次のように変えることができます。
株価 = 業績(EPS)× バリュエーション(PER)
稼ぐ力と、バリュエーションを掛け合わせた結果が価格=株価というわけですね。
PERの注意点
PERには注意点があります。
PERは対象企業の1時点を切り出しても、意味がないということです。
つまり、
- 同じ業界(国)の他社と比較する。
- 過去の推移と比較する。
こういった相対的な比較を通して、初めて意味を成します。
利益水準は業界や国ごとの税制で異なるので、
全然違うものを比べても意味がありませんね。
また、PERでバリュエーションの行き過ぎ=過熱感を測るうえでは、過去との比較が大変重要になってきます。
この点は、この後触れます。
コロナショック前のPER水準を見てみる
それでは、コロナショックが起きる前のPER水準を見てみましょう。
今回は個別株ではなく、国ごとのPERを見てみます。
これであれば、「市場全体として過熱しているかどうか」がわかりますね。
歴史的に見ても高水準のPERだった
これを見ると、以下のような特徴が読み取れます。
-
米国は歴史的に見てもPERが高かった。
-
2004年以降のレンジの最高値である18倍の水準にある。
-
2018年は18倍に達した後、14倍程度まで調整が進んだ。
-
14倍は、2004年以降の平均値である。
シンプルに考えて、こんなにすぐ、企業の成長力が伸びたりするでしょうか?
どちらかと言うと、買う側が「期待しすぎ」という側面が強くないでしょうか。
- 2018年の株価下落は行き過ぎたバリュエーションの修正によるものだ。
- そして、2019年の株価上昇は、再びバリュエーションにおける過大評価が進行した結果だ。
(出典:両図共にPJモルガン・アセット・マネジメント)
https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/gtma?lang=ja_JP
こうした状況を踏まえると、コロナショックによる株価の下落は、行き過ぎたバリュエーションの修正としての側面も強い、と捉えることができそうです。
まぁ、後から見れば何とでも言えるのかもしれませんが、
こうした振り返りさえしないと、なかなか同じ罠を避けることさえ難しいですからね、、
あらゆる論理でバリュエーションは正当化される
このように、PERの比較を通して、相場の過熱感を測ることができます。
一方で、このバリュエーションというやつは、非常に厄介です。なぜなら、相場がイケイケのときは、あらゆる理屈で正当化されるからです。
昨年、よく言われていたのは、
「現在の資金流動性を前提とした場合、米国株のPER18倍は決して高くない」
というものです。
確かに、ある面ではその通りなのでしょう。
市場に資金がダブついている以上、株式に流れ込むお金も増えますから、
評価の発射台も一段上げて考える必要があるかもしれません。
しかし、この手の話は割り引いて考えた方がよいと思います。
なぜなら、こうした理由付けをしている人々は、
- 高くても株を買ってほしい人
- 高くても株を買いたくて仕方がない人
このいずれかに属することが多いからです。
2番目のほうは、私も当てはまりますね。
目の前で株価が上がっていると、頭の中で、
「バスに乗り遅れるな、、」
と、誰かの声が聞こえてきます。
そんな時に、
「今の株価は高くないよ!適切な価格だよ!」
なんて言われたら、ころっといっちゃいますね(笑)
最後に:「買うための材料」ではなく、「冷静に判断する」ための材料だよ!
さて、本日はPERについて見てきました。
改めて強調させていただきたいのは、
PERは自分が買うための理由付けの材料でなく、冷静に現在の状況を判断するための道具だよ
ということであります。
私が投資を始めた時がまさにそうでして、
とにかく「自分が今、買うことは適切だ」という理由を探したくなります。
そうした際に、PERのような本来は過熱感を測る指標が、
結果的に高値掴みの原因になってしまっては本末転倒ですね。
こうした指標が、皆さんの健全な投資生活の役に立つことを願っております。
ご参考
「周りを見て過熱感を知る」ことの重要性は、偉大な投資家であるハワード・マークスも言っています。